dialy

開発者が語るエヴォ制作奮闘記!
98年X月
ついにランチャー家の執事、グレ・ネイドのデザインが決まる。思えば長い道のりだった。
と、言うか単に都合上後回しにされていただけだったのだが。一応当初原作側でイメージ
していた、「ロマンスグレー」「燕尾服」「ヒゲ」「スマート」「背が高い」等の要素がきちんと
具現化されたものがデザイナーさんの方から上がってきたので即採用が決定された。
グレは、元々はアメリカのTV番組「バッ*マン」に登場する執事のイメージで検討されていた
もので、基本はそれ。ただ「時にはご主人様と一緒に戦ったりもして、強いし頼りにもなる執事」
というキャラにしたかったのでむしろ某ロボットアニメに登場した「ギャリ*ン時田」の方が近い
かも知れない。いずれにせよ、どちらも「バッ*マン」の執事が元になっているのだが。
グレは非常に受けも良く、人気も高かった。狙って採用したキャラが多くの人たちに受け入れ
られたというのはとても嬉しく、また非常に感慨深いものであった。
(99/05/13 文:松村)
97年X月
ネーミング秘話特集ラストである今回のお題目は、フワフワとホバリングする怪物蚊
「モスキトー」と、本作品中最大の謎(本当かな?)な名前を持つ巨大ネズミ「ビッグベン」。
まず「モスキトー」についてであるが、コイツは英訳するとそのものズバリ「蚊」である。
で、色違いの「スペクラー」は和訳すると「まだら」とかいう意味を持っている。
あの、夏木陰とかにいるとやってくるグレーと白のまだら模様をした蚊をイメージして
つけた名前である。しかし、作品中登場したのは「まだら」ではなかったが・・・。
次にいよいよ「ビッグベン」であるが、コイツら、実は他愛も無い命名をされているのだ。
昔、洋画で「ベン」というのがあったが、アレは原作者の記憶によればネズミが出て来る
映画だったように思える(違ったらゴメンナサイ)。で、でかいネズミなので「ビッグベン」。
別にイギリスにある時計塔なんかではないのである。そして次にその色違いの「ガンバス」。
ここまで来れば聡明な方々には想像のつくところと思われるが、これは昔やっていた飛行機が
理不尽な空中戦をする洋画「ガンバス」(知ってる人いるかな?)とはまったく関係無い。
本命は実はあるアニメーション番組(ネズミたちがどっかの島まで旅してそこで偉そうに
している白いイタチをやっつける話)の主人公ネズミから頂いた。ただ、そのまま使う訳には
いかないので「ス」を最後に付けたというものだったのだ!ただそれだけなのである。
共通項は「ネズミ」であることだけ。ヒネリも何も無い、実に短絡的なネーミングだったのだ!
でも、不愉快に思われた方々には申し訳ないが、原作者はこの名前をとても気に入っている。
(99/04/30 文:松村)
97年X月
前回に引き続きまたモンスターの名称について。今回は我々人間にとってある意味害をなす
連中でもある、嫌な連中「ゴキカブリ・シリーズ」について述べさせて頂く。
「ゴキカブリ」。これは誰でも良く知っているいわゆる「ゴキブリ」の古の昔の呼称である。
最初は英語でネーミングしようかと思っていたのだが、この「ゴキブリ」は英訳すると
「Cockroach(コックローチ)」となる。何やらどこぞのメーカーの殺虫剤みたいな
名前になってしまい、しかも例えば「キングコックローチ」とか「エンペラーコックローチ」とか
どうネーミングしてもカッコ悪い。よってこの案は見送られ、代わりにストレートに「ゴキブリ」
でも何なので「ゴキカブリ」という名称を使用することとなった。で、せっかく日本語ネーミング
になったのに「キング」とか「エンペラー」とか付けるのもバランスが悪いので、ここに来て
晴れて「ダイオウゴキカブリ」「テイオウゴキカブリ」という名称を与えられたのであった。
ところでこの「ゴキカブリ」、漢字で「御器噛」と書くらしい。昔から御器を噛み噛みする嫌な
奴等だったようだ。でも、実はこの地球上では彼等は我々人類よりも遥かに歴史の古い
生命体、つまり大先輩なのだ。この事は、いくら逆立ちしても曲げられない事実なのである。
我々はそんな大先輩を今日、スリッパや丸めた新聞紙で殴っているワケである(う〜ん)。
(99/04/26 文:松村)
97年X月
前回はミリタリー系ネーミング編だったので、次は別のネタを。今回はお尻に顔の模様が
ある巨大なクモ、「クレイモア」と「レッドバックウイドウ」である。
まず「クレイモア」。これは英綴りだと「CLAYMORE」。何でもスコットランド高地人の
使う両刃の大剣の名前だそうだが、原作者は現用米軍の対人地雷を意識して採用した。
(結局ミリタリーじゃん!)。んで、「レッドバックウイドウ」なのだが、コイツのネーミングは
かなりストレートで日本語に訳すと「赤い背中の未亡人」となる。未亡人は別名「後家(ごけ)」
である。言い方をちょっと変えれば「セアカゴケグモ」。97年頃流行ったあのドクグモである。
「それだけかい!」と言われると本当にそれだけなので、何も言い返せないのが実状である。
次に「ミレピード」「テラピード」。ムカデのことを英語で「CENTIPEDE(センチピード)」
と言うが、それに引っかけたコイツらの命名方法はシンプル。「ミレピード」の「ミレ」は「ミレニ
アム(一千)」、「テラピード」の「テラ」は「テラバイト」とかの「テラ」のつもりだった。
とにかく「足がいっぱい生えてるヤツら」というニュアンスを出したかったのだ。
ただし実際には、千本も足のある3Dモデルを作る訳にはいかなかったのだが。しくしく。
(99/04/14 文:松村)
97年X月
以前モンスターの名称で、多くのものが古代生物の学術名であることについて述べたことを
記憶しているが、それ以外のものでネーミングの由来が明らかでないものについて、ここで
幾つか補足させて頂くことにする。
まず「フム」。このモンスターは「水牛のようなモンスター」という設定だった。
水牛は英語で「バッファロー」。「バッファロー」は大戦中の米国の戦闘機の名前でもあった
のだが、そのまま使うと芸が無いので変えることにする。この「バッファロー」戦闘機は
北欧の国フィンランドで「フム」と呼ばれて使われていた。で、めでたくこの名前になったの
だった。ちなみに「フム」の色違いの「ミルスキー」というヤツだが、これも大戦中の飛行機の
名前で(フィンランドが独自に開発した戦闘機)そっから拝借した。
次に「ブルムベア」。これはミリタリー好きな方はすぐにお分かりになると思われるがドイツ軍
の灰色熊突撃砲戦車。で、その色違いの「フェルディナンド」は「エレファント」という名前の
ドイツ軍の突撃砲戦車があり、それは別名「フェルディナンド」と呼ばれていたので
(この車体の製作者の名前。実はあの有名なポルシェ博士)そっから拝借させて頂いた。
一応各モンスターごとにジャンルを統一したかったのでこんなムムムなネーミングを
ネチネチと行っていたのだ。続きはまた今度。
(99/03/24 文:松村)
97年X月
女性キャラ粛正運動が起こる。別に女性がでしゃばるので権利を剥奪しようという
ワケではない。原作者が暴走して女性キャラを増やしすぎたため、ストーリーのバランスが
崩れたからである。この運動によってまた何人もの女性キャラが消滅した。
ショットガンぶっ放す女性とか、港で荷物運ぶ肉体派の女性とか、図書室の女性管理人とか
いなくなったペットのアヒルを探す女の子とか、アンドロイドの双子の女の子とか・・・。
まるでギャルゲーのようにいろいろな女性キャラがいたのだが、み〜んなボツ(う〜ん)。
実はソシエテの受付嬢ニーナと町中に立つミス・メロンさんは、あの粛正の嵐を潜り抜けた
大変貴重な、その時代の名残キャラなのである。
ソシエテには原作時から受付嬢が設定されていたので、ニーナはその正当な子孫と言えるし
ミス・メロンに関してはいろいろあって観光客に落ち着いたが、元の職業は毛皮のコートを
着ていることから聡明な方々はお分かりになると思われるが、ヤバイ仕事だった。
ちなみに男キャラもそれなりに粛正されている。こちらはむさ苦しかったからであるが。
(99/03/18 文:松村)
97年X月
それぞれのキャラの口癖、自分のことを何と呼ぶかなどを統一するためにモメる。
原作者としてはチェインにどうしても「だわさ」を言わせたかった。
あと少しでチェイン嬢の「頭がワサワサだわさ」という寒いギャグが原作シナリオに
刻まれる所だったが、カントクを含む他のメンバーからの強力な圧力がかかり、
計画は中止となる(またもや暴走の失敗)。
その他にも消えていったものは幾つもある。例えばチェインがマグを小馬鹿にして
呼ぶ時の「マグ・ランチャーのダンナ」とか、ペッパーがこれまたマグをからかって
呼ぶ時の「マグぼうや」、「マグ君」などなど。
極めつけは、オイゲンなど第8帝国系の偉い人たちが相手を呼ぶ時の「卿(けい)」。
「卿らは何々だと言うのだな?」というやつである(銀○伝)。
とても同じオイゲンとは思えないカッコ良さだが、これに限っては万が一採用されても
イメージ云々の前に、フォントの関係(読みにくい)で結局はボツになったと思われるが。
(99/03/11 文:松村)
97年X月
エヴォルシアやサイフレームを開発して、そして数万年前に滅亡したと伝えられている
先史文明について、具体的に考える。ゲーム中ではあまり明かされてはいない設定では
あるが、その裏でイメージだけはあれこれと膨らんでいたのだ(これも原作者の暴走)。
エヴォリューションのサイフレームなどのデザインは、かなりコミカルなイメージを
強調し、基本的には一目で道具などを連想させる分かりやすいものを選んだのだが、
それを生み出した先史文明自体は別にコミカルな存在ではなく、まじめな文明であり、
まじめに繁栄して行き、そしてまじめな理由で滅んでいったのだ。
エヴォリューションで描きたかったもののひとつに、そのかわいらしい絵やコミカルな
ストーリーとはうらはらな、人類の未来に対する一種の「警鐘」というものがあった。
高度な文明と、それを扱う人間。両者はどこで折り合いを付けたら良いのか?
これは今日の我々にとって、当然人ごとではないテーマのひとつである。
何度も描かれ、そしてまた、充分に描き切られていないテーマではあるが。
(99/03/10 文:松村)
97年X月
当時はまだゲームの仕様が固まりきっていなかったので、
原作者の妄想が暴走を繰り返していた暗黒の時代だった。
しかしそんな原作者もかなわない強敵がいたのである!
それが何であるかは敢えてここでは述べないが、原作者の妄想電撃戦は
そこで度々ストップをかけられたのだった(うき〜っ!)。
そんな時、原作者は膝と腰を負傷。全治2〜3ヶ月の重傷(でも出社はしていた)。
それをきっかけに、ひ弱な先史文明人がサイフレームを行動支援ユニットとして
使っていたことを思い付く。以前からぼんやりとそういう発想はあったのだが、
やはり人間、何かを経験しないと到達できない世界があるもので、
この負傷により、その発想はかなり具体的なイメージとして成立したのだった。
(99/03/09 文:松村)
97年X月
ワールドマップが改訂され、都市や遺跡の場所や名称、それぞれの土地の文化などが
明確にされる。この当時から世界は広く設定されていたのだ。
また、未開の土地なども設定されており、レベルアップ用やハマリ防止用に遺跡の外
や移動フィールド上での戦闘なども検討されていた。
しかし、それらはいつしか労力を越えた「幕の内弁当」的な仕様となりつつあった。
結局これらは後に改められることになった。
極端な話、ゲームに限らずものを造るということは、それが例え1分のものを造るという
作業であっても、複数の人間で数日とか一ケ月ということもザラではないのである。
考えるのは簡単だが、それを具現化するのは実に骨の折れる仕事なのだ。
(99/03/08 文:松村)
97年X月
続エヴォ裏話。
初期エヴォリューションの世界には、必ずと言って良いほどに「トイレ」が登場した。
建物内部にはたいてい一つは個室が配置され、船なども例外ではなかった。
「トイレ」に絡むイベントも幾つか考案されていた(当然ボツになったが)。
別に原作者がトイレマニアな訳では無い。人間の生活観を表現したかっただけなのだ。
よくRPGなどでは、「トイレ」や「バスルーム」などは大抵端折られてしまう。
そのことに不満があっただけなのだ!ウム。
・・・でもストーリーの進行に特に影響する訳じゃないし、人間の恥ずかしい一面を
匂わせるものだから、嫌がる人もいるだろうし。しかもグラフィッカーの仕事が増えるし。
と、いう訳で結局「トイレ」はエヴォ世界からも消滅したのであったのだ。
ちなみに第8帝国では「トイレ」のことを「トワレッテ」と言う(だから何?)。
(99/03/05 文:松村)
97年X月
サイフレーム使いの攻撃モーション案を要求される。
ペッパーは射撃系のサイフレームだったので案を出すのは楽勝だった。ただ撃てば
よかったからである(しかし実は後にその中での攻撃バリエーションを考えるのに
苦労することになるのだが・・・)。
チェインも背中の剣が横倒しになって・・・という感じで割と簡単にまとまる。
で、問題のマグ。この時デザインは確定はしていなかったが、「十得ナイフ案」は
原作者の頭の中から消えていなかったのでそのまま使うことにして、中からでかい手や
トンカチやら出て来るようなラフ画を描いてデザイナーに提出する。
製品版のマグが登場するのはそれからまるまる1年後ぐらいになるのだが、
おおまかなイメージに変化は無かった(一部サイフレームの表面加工が変わった程度)。
マグのサイフレームは、暴走しがちな原作者案中、大変珍しい非絶滅種だったのだ。
(99/03/04 文:松村)
97年X月
各キャラクターのモーション、顔(当時はまだメッセージウインドウ内部に2Dの顔を
配置する予定があった)の一覧を出せと言われ、出してみる。とてつもない量だった。
グラフィック・チーフは恐い顔に怒気を宿す。修正。しかしあんまり減らせなかった。
グラフィック・チーフは再び顔に怒気を宿す。しょうもないジョークを言ってみる。
グラフィック・チーフは更に顔に怒気を宿す。「それで?」。どうしよう・・・。
結局一番使用頻度の高そうなものから優先的に作業を進めることになる。歩くパターン
とかそういうやつである。その他のものについては後回し(保留)。
顔グラフィックに関してはデザイナー嬢が紙に描いたものを取り込んで表示。しかし
原版が線画だったため、まっ白で良く見えなかった。
製品版のような形式になるのは、はるか14万8千光年先の話だった。
(99/03/03 文:松村)
97年X月
以前、この開発日記上で「マグのシャワーシーン」というのが紹介されていたが、
当然の如く、他のメンバーにもいろいろな(怪しい)イベントシーンが計画されていた。
3Dということで、表現力はスゴイぞ!とか思っていたら、その代わりそれらを作成する
ための労力はとんでもないものだということを後に知ることになるのだったが。
「マグのシャワーシーン」というのもなかなかのインパクト&ショッキングなネタでは
あるが(と言うか最強かも知れない)、その他にもオーソドックスではあるが
「リニアの一糸まとわぬ系」とか「ペッパーのマグにチュー系」、「チェインお嬢様の
恥ずかしい姿覗かれ系」等、原作者の煩悩渦巻く怪しいイベントが星の数ほども設定されて
いた(ほとんどボツになった。理由は言うまでもなく、内容にそぐわなかったためである)。
そんなこんなの中で、ストーリーを見た開発メンバーの中から出てくる言葉は、決まって
「マグってモテモテ」というものであった。どこへ行っても、誰に会っても、それがたとえ
敵であっても、マグは相手が女性の場合、必ずそいつに好かれるのだ(いーなー・・・)。
まだ原シナリオを作成していた時の話である。
(99/03/02 文:松村)
97年X月
これまでにまとめたモンスターなどのアイデアを内部公開する。遺跡の中にいそうな
連中と言えば、これはもうゲジゲジとかネズミとか汚いのでしょう!と思って練った案
だったが、なんと社内では折り紙付きの酷評の嵐。「気持ち悪いのばっかりー!」
「○ンダムみたいなカッコイイのはいないんですか?」げしょげしょ。
更に追い討ちをかけたのがダイオウゴキカブリ。グラフィッカーの人に試しで3Dで描いて
もらったのだが、ヤツは人間の遺伝子の中に「不愉快なもの」として登録されているらしくて、
画面の中で動いているのを見ているだけでみんなイライラしてくるのだ。ただ、「印象に残る」
という点に関しては今回のモンスターのラインナップは成功だったかな?と思ってもいる。
ちなみにエヴォ世界のモンスターの名称については、かなりの種類が古代生物の学術名
から命名されている。舌を噛みそうな長ったらしい名前(例えば「パレオカリノイデス」など)
はみんな学術名と考えてもらって差し支えないと思う。
(99/03/01 文:松村)
97年X月
いろいろあったが、世界観設定とキャラの設定、シナリオ執筆作業は滞り無く
進められていた。この頃「ぜひ敵にもサイフレーム使いを・・・!」という怪しい計画が
裏で密かに進行していた。松村の計画では第8帝国軍に3人、辻斬りのような形で
ダンジョンに登場する妙な連中が3人、そしてサブイベントで登場する限りなく特殊な
おじさんたちが4人の、合計10人のとっても危ないサイフレーム使いが
設定されていたのだ(実は)。
自分にとって非常に残念だったことは、彼らはそのラフデザインすらあげてもらえなかった
という事である。その理由は・・・今もって謎である(あまりにも変な連中でエヴォの
世界観にそぐわなかったから、という説が有力)。
(99/02/25 文:松村)
97年X月
画面表示デザインのアイデアを出してみる。
味も素っ気もない無機質なデザインとは違うものを作りたいと思い、
ぶよぶよしたジェル状のメニューウインドウにしてみようと思い付く。
「ジェルの部分が常に動いていたら結構カワイイかも」などと考えながら、デザイナーに
テスト版を発注する。デザインはなかなか良かったのだが、実際にゲームに
組み込んでみると文字が読み辛くなってしまった。
なかなかデザインと使い勝手は両立しないものだな、と反省する。
(99/02/15 文:冨田)
97年X月
エヴォ裏話。
実は当初、「マグのシャワーシーン」というイベントが設定されていて、そのシーンの為に
何と一糸まとわぬあられもない姿のマグの3Dモデルがあった。
これを作ったデザイナー(男)が「気持ち悪い〜」とか言っていたのを今でも覚えている。
モーションが付けられる前にそのイベントがボツになってしまった為、その姿は日の目を
見る事がなかったが、「是非見たかった!」と思うマグのファンはいるだろうか?
(99/02/05 文:冨田)
97年X月
エヴォの戦闘システムは当初シミュレーション色の強いものだった事は以前に書いたが、
製品版に使われているシステムに落ち着くまでに、まだ他にも幾つかの案があった。
「完全なリアルタイム戦闘にして操作できるのも主人公だけにする」というのもその1つ
だったが、ゲームがとっつきにくくなるなどの理由で今回は見送っている。
エヴォは「誰でも遊びやすく」というのがコンセプトの1つだったので、製品版で使われている
システムに落ち着いたのだが、実際に遊んだユーザーはどう感じただろうか?
是非ともアンケート葉書などで感想を聞かせて欲しい。
今回採用しなかったシステムは、また別の機会にユーザーにお見せできたらと思っている。
(99/02/03 文:冨田)
97年夏
戦闘のメインプログラマーであった俺はその頃、遅まきながらバーチャロンに熱中していた。
おかげで、バーチャロンテイストな、戦闘シーンがいくつも出来上がっていった。
レーザーを撃つマグ。敵に向かってトンファー!・・・イカン、つい暴走してしまった。
しかし、自分達が楽しくなければ、プレイヤーが楽しいと思うゲームなど作れん!
・・・などと勝手な事を言いつつテストバージョンでの実験は続いて行くのだった。
(99/02/02 文:平)
97年7月X日
サターン上のテストバージョンで戦闘シーンが色々と動くようになる。
といっても、まだ技の仕様が正式に決まっていなかったので、プログラマーの方で
実験を兼ねて作られたエフェクトが画面に出ていた。
ポリゴンで作られたミサイルやファンネルが画面を飛び交い・・・・おや?
製品版でも似たような感じの技が登場するが、それと比べてしまうと当時のものは
まだまだ表現力の低いものだった。
(99/02/01 文:冨田)
97年6月
既に開発が進んでいた「バロック」の方が忙しくなってきた為、
グラフィッカーと企画の一部がサポートにまわる事になる。
そんな時、いなくなったグラフィッカーの代わりにテスト用の爆発パターンを
描いてくれとプログラマーに頼まれる。
入社当初はグラフィッカーだったが、企画になってからは何年も絵を描いていなかった。
「そういえば昔は16色しか使えなかったなぁ・・・。」などと考えながら爆発を描く。
当然の事だが、この時の絵は製品版には入っていない。
(99/01/27 文:冨田)
97年5月
サイフレーム(当初の名前はサイアームだったが変更した)の仕様に悩む。
せっかくの1930年代風の世界観なので、剣や魔法のファンタジー的な表現は
極力避けたいと考えていた。
そこで、格闘やアクション的な見せ方とメカっぽさを強調する方向で行く事にし、
テストバージョンを見ながらシステムの仕様を詰めて行く事にする。
(99/01/26 文:冨田)
97年4月Y日
この頃になると、セガサターン上でテストバージョンが動くようになる。
当時は背景もキャラもレンダリングされたCGを取り込んだものを使った
2Dのゲームだった。
戦闘シーンだけは背景などにポリゴンを使い、カメラの移動などを入れて
擬似的に3D空間を表現しようとしていた。見た目はかなり違うが、
やろうとしていた事は現在のものとそれほど大きく違っていなかった気がする。
(99/01/21 文:冨田)
97年4月X日
一部企画が強化される。これまでに用意した町や建物内部のレイアウト案を元に
シナリオ上でしか記されていなかったイベントなどが検討され、正規の文面とし
て作成される。並行してダンジョン内部のレイアウトやイベントなども同じ作業
が進められることに。これで自分は「シナリオだけ書いていればOKな身分」に
なったと思っていたら、甘かった。世界観側からの設定をドシドシ出さなければ
ならなかったのだ。
ストーリーの完成に引き続きシナリオの作成も随時進められる。実はこの頃の
リニアは、大人しい性格は今と変わらないが割と普通に喋るキャラだった。
(99/01/20 文:松村)
97年Z月Z日
ストーリーができあがり、更に検討が重ねられる。これによって登場人物などに
若干の設定変更が加えられる。この頃、やっとリニアはリニア・キャノンという
名前となる。「主要登場人物はあくまで武器の名前」というコンセプトから、こ
のネーミングには随分悩んだが、うまく定着したようなので結果的には良かった
と思っている。ちなみにこの「リニア」(英語では「LINEAR」)の意味は
辞書で調べると「直線」とか「まっすぐな」とかいう意味らしいのだが、ずっと
リニア・モーターカーとかのおかげで「磁力」という意味だと思い込んでいた。
とんだ間違いであった。リニア・キャノンの名前の由来について、一部の誌上で
「滑空砲」と掲載されたので論議をかもし出したようだったが、あれはあくまで
意訳であり、誤訳や間違いではないので、どうかご了承頂きたい。
(99/01/19 文:松村)
97年Z月Y日
登場するメカなどのイメージを考え始める。基本的に完全にリアルなものは避け、
質感はリアルでもディフォルメされたデザインでいくことにする。
エヴォリューションの世界は1930年代後半を意識した時代設定で進めていた
ので、メカも全体的に斬新なデザインのものではなく、実際にあったようなもの
をうまくミックスしつつ、アレンジをかけてそれらしく見せることとした。
ただしサイフレームに関しては未知の超科学文明「先史文明」の生み出したメカ
ということなので、道具っぽいデザインであれば特に制約は設けなかった。
(99/01/18 文:松村)
97年Z月X日
この頃になるとそろそろ色などの設定を行う必要が出て来る。まず最初にマグの
カラーリングを決めることになる。マグは主人公なので良くある「主人公カラー」
が検討されたが、全てボツ。意見の一致を得たのはシブ〜イ色合いのマグだった。
しかし実際に画面上で着色してみた結果、最もバランスのとれたものであること
が判明。採用されることとなる。
(99/01/14 文:松村)
97年Y月Z日
町のレイアウト、そこで発生する小イベントの考案も始まる。この当時はまだ
プレイヤー自身が歩き回るマップが、どういった仕様になるのか未定だったために
設定はストーリーに沿って建物の大体の配置、配置された建物の概要程度に
留められた。美術についてもまだ担当が決まっていなかったため、自分でおお
まかに「こんな感じ」程度のものを描きためていた。
(99/01/13 文:松村)
97年Y月Y日
女流冒険家ペッパー・ボックスのデザインができる。「セクシーでワイルドで
ダイナマイツ……」という注文をデザイナーさんに付けたら考えていた通りの
デザインとなって帰って来た。デザインは全体的に問題が無く、一部を除き
(後に鋲を打った皮バンド等を追加した)ほぼそのまま採用されることとなった。
社内的には一番人気の無いキャラだったが、自分的には一番のお気に入りだった。
ペッパーは元々マグの遠い憧れ、お姉さん的存在であり、そしてまたチェインとは
ボケとツッコミの漫才コンビにする予定で生み出されたキャラクターであった。
この頃になるとサイフレームのデザインに悩みはじめる。機能等で個性を出そう
と思っても、思いのほかバリエーションが少ないうえに、取り付ける位置や形、
大きさによってはキャラクターにモーションを付ける時の障害になるからである。
(99/01/12 文:松村)
97年Y月X日
他の登場人物の設定も並行して行われる。初めのうちは全体のバランスも考慮せず
いろいろな人物を考案していたが、各キャラの個性を絞り込む必要が出てきた。
ダンディーな冒険家のおっさんや、あやしい敵キャラなどいろいろなものが
考案されていたが、今回は出番なしという事になった。
結局おおざっぱに主人公マグの仲間となる冒険家を数名、敵となる人物を数名、
話に関係してくるキーパーソンをちょこっと考案することにして作業を進めたが、
それでも人物設定は結構な分量になった。
各地で登場する民間人などは、この時点では「おっさん」とか「女の子」等の名称
で仮の設定に留めることとなった。でないとキリが無いからである。
この頃になると現在のエヴォリューションで登場するメンツはだいたい揃っていた。
今回ゲームに登場する人物たちは、その膨大な人物設定の中からチョイスした人材
なのだが、消された人物の中にも楽しいヤツラは結構いたので、いずれ何かの形で
登場させてやりたいと思っていたりもする。
(99/01/11 文:松村)
97年X月Z日
なぜかグレは後回し。代々ランチャー家とはライバル関係にあるガン家の跡取り娘
チェインの人物設定及びデザインが決定。開発サイドでもかなりの人気を誇るキャラ
となる。デザインを担当した女性スタッフ曰く、「このコを主人公にしましょう」。
この言葉に一瞬心が揺らいだ企画サイド。しかし企画は進んでいるのだ。今更後戻りは
できないのだ!
このチェイン・ガンも、先に記した理由もあって年齢の割には「かなり」幼さの残る
キャラクターとなった。社内でもこのことに関しては色々と話し合ったが、
今回のエヴォリューション製作上のコンセプトとして主人公たちのデザインは
「可愛らしいキャラで行く」ということになっていたので、そのまま企画製作は
進められて行くのだった。
ちなみにチェインはかなり早いうちからサイフレーム込みでデザインが決まっていた。
(99/01/08 文:松村)
97年X月Y日
主人公のマグと並行してヒロインであるリニア・キャノンの人物設定も決まる。
リニアのデザインはこれといったリテイクも無くあっさりと決まる。
現在の仕様との違いと言えば髪が金髪ではなかったことと、底の厚いいわゆる
「おいらんサンダル」ではなくフニャフニャの皮のクツを履いていたことくらいで
あのダブダブの服や長い後ろ髪などはこの頃から変わっていない。
企画を進めて行く途中で、全主要キャラの年齢が引き上げられた(マグは当初
13歳だったが16歳になった)が、頭身やデザインなどは特に変更されなかった。
年齢とはうらはらな、各キャラのあのラブリーなテイストは偶然そこから
生まれたのだった。
(99/01/07 文:松村)
97年X月X日
主人公のマグ・ランチャーのおおまかな性格設定・背景などが決まり、
社内のデザイナーさんへデザインを発注する。当初は社外にデザインを
発注するという予定もあったが、諸々の事情と自社の色を強く押し出すために
社内でデザインを起こすこととなった。この時点でゴーグルやヘッドギア、
ツナギの服など、現行のマグに近いものができあがる。
しかし、まだサイフレームのデザインは決まらず、両者を合わせたものが
できあがるのには、かなりの日数を要するのだった……。
(99/01/06 文:松村)
97年2月末
大作RPGということで、大筋の流れと世界観設定、登場人物が決まる。
当初各主要キャラクターは設定年齢も低く(何とグレは40歳だった!)
全体的にお子ちゃまなイメージが強かった。
また、キャラの名前もまだ固まっておらずリニアにはパンドラという名前が
設定されていたりもした。それ以外にも幾つも今日のエヴォリューションと比較すると
「とても同じ物とは思えない」部分もあるのだが、それはまた別な物語である。
(98/12/28 文:松村)
97年2月
諸般の事情で草案がボツになる。
世界観及びストーリーを白紙の状態から再構築する事になり、
企画チームでいくつかラフアイデアを出す。
 ・忍者が主人公の妖術合戦もの。
 ・タイムパトロール隊員の少年が活躍するレトロSFアニメ調のもの。
 ・人間側の神と魔獣側の神との戦いを描くシミュレーションRPG。
 ・王家の少年の諸国漫遊もの。
 ・悪の組織に追われる姉弟の逃避行を描く超能力もの。
 ・自分の体をメカとリンクさせて戦う少年少女が主人公の冒険活劇もの。
検討の結果、最後の案を採用する事になった。
(98/12/25 文:冨田)
96年秋
当時制作中だった「バロック」に続くサターン用RPGとして、企画の草案が上がる。
この頃は剣と魔法+SFの世界観で、戦闘もシミュレーション的な色合いが濃かった。
まだ、マグやリニアといったキャラクター達も生まれてはいなかった。
(98/12/21 文:冨田)


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